ピロリ菌の歴史(後編)

スポンサード リンク

目次

目次 ピロリ菌

1975年  らせん菌と胃炎の存在を証明

以前から尿素を分解して二酸化炭素とアンモニアを産生する酵素であるウレアーゼが、胃粘膜に存在することがつきとめられてきました。

どうして塩酸が胃粘液層に侵入しないかは、ウレアーゼのアンモニアが防御的役割を果たしていると考えられるようになります。

しかし、多くの研究者が胃粘膜組織に詳しくなかったために、胃粘膜に存在する細菌と胃粘膜のウレアーゼ活性との関連性については放置されてしまいます。

その中でもスティールとコリン・ジョーンズが胃潰瘍の胃を50個を切除し、81%にらせん菌と胃炎が存在することを証明しました。ただ、当時の研究技術ではらせん菌の培養には成功しませんでした。

その後も研究を続けたスティールは十二指腸潰瘍患者の十二指腸にみられる胃上皮化生粘膜に、らせん菌が存在することを明らかにしました。

1982年  らせん菌の再発見と培養法の確立

オーストラリアのバリー・マーシャルとロビン・ウォレンのところに、腹痛を訴える76歳のロシア人患者がやってきました。胃生検組織で慢性活動性の胃炎像があることがわかると、マーシャルは患者の承諾を得て、テトラサイクリン2g/日を14日間投与します。

患者の症状は改善し、再検した胃生検組織からも胃炎像が消失していることに判明しました。これを機会にマーシャルもらせん菌と胃炎の関連性を確信するようになったのです。

その後も2人は胃生検組織の培養を研究し続け、延べ100を超える培養例を実施しましたが、らせん菌の培養にはこぎつけませんでした。

当時は低濃度の酸素と二酸化炭素を効率良く利用する「微好気培養技術」が基盤となっています。

栄養要求性の厳しい細菌に対しては特殊な培地と培養法が必要なために、マーシャルらはこの微好気培養技術を応用し、慢性活動性胃炎の患者の胃内と幽門付近かららせん菌を分離することに成功しました。しかし、らせん菌の培養には失敗し続けたのです。

ところが偶然か必然か、人の胃かららせん状の菌を培養することに成功しました。

それはマーシャルの実験助手が休暇をとったため、マーシャルは通常は数日で終わらせる培養を5日間そのまま放ったらかしにしたところ、培地上に細菌のコロニーができていることに気づき、これがらせん菌の培養の成功につながったのです。

後にヘリコバクター・ピロリ菌は増殖が遅く、培養には長時間を必要とする細菌であったことが判明しました。

1994年  胃癌の病原体であることを発表

発見された当時、慢性胃炎や胃潰瘍はもっぱらストレスだけが原因であるという説が主流でありましたが、マーシャルらはヘリコバクター・ピロリ菌がこれらの疾患の病原体であるという仮説を提唱しました。

これらの疾患の慢性化と胃癌の発生が関連することが、当時すでに知られていたため、この仮説はヘリコバクター・ピロリ菌が癌の発生に関与する可能性を示唆するものとしても注目されましたが、当初は疑いの目を持って迎えられたとのことです。

そこでマーシャルは培養したピロリ菌を自ら飲むという自飲実験を行いました。その結果、マーシャルは急性胃炎を発症し、仮説の一つが証明されたのです。

しかし、マーシャルの胃炎は治療を行うことなく自然に治癒したため、急性胃炎以外の胃疾患との関連については証明されることはできませんでしたが、
慢性活動性胃炎と呼ばれる組織学的胃炎が生じました。

慢性活動性胃炎は胃粘膜がもろくなることが明らかで、この状態は胃酸やストレスなど種々の外因性の因子に影響を受け、さらに胃粘膜の障害が強くなっていく傾向があります。

その後、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌に成功し、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発がほぼ抑制されることも明らかになりました。

一方、マーシャルとは別にニュージーランドの医学研究者アーサー・モリスも、また同様の自飲実験を行っています。マーシャルと同様に急性胃炎を発症しただけでなく、モリスの場合は慢性胃炎への進行も認められました。

ヘリコバクター・ピロリ菌が急性胃炎、慢性胃炎の原因になることが証明され、これらの疾患の慢性患者の多くからピロリ菌が分離されること、除菌治療が再発防止に有効であることも明らかになりました。

動物実験で胃癌の発生に成功し、1994年には国際がん研究機関(IARC)が発行しているIARC発癌性リスク一覧に発癌物質として記載されました。

2005年  ノーベル生理学・医学賞を受賞

医学的な重要性から、ヘリコバクター・ピロリ菌の研究は勢力的に進められ、1997年にはゲノム解読が完了しました。この結果から、胃内定着の機構や発癌のメカニズムについての研究がさらに進められています。

2000年11月より日本でもヘリコバクター・ピロリ菌の診断と治療が胃潰瘍や十二指腸潰瘍の患者に健康保険が適用されるようになり、難治性潰瘍、再発性潰瘍で悩んでいた患者にとって大きな福音となりました。

胃過形成性ポリープの約75~80%がヘリコバクター・ピロリ菌の除菌により、消失または縮小が確認できています。

2005年にはヘリコバクター・ピロリ菌の発見の功績によって、バリー・マーシャルとロビン・ウォレンに対してノーベル生理学とノーベル医学賞が授与されました。

そして、現在はヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療が推奨されています。

スポンサード リンク

マーク  法的条項
マーク  プライバシーポリシー

ピロリ菌のデータ

ピロリ菌のデータ
  学名  
ヘリコバクターピロリ
  身長  
約3-5μm
  特徴  
胃のみで生きられる

体験者のおすすめ

LG21 ピロリ菌と戦う優等生!胃でしっかり働く乳酸菌です
LG21でピロリ菌が減少

ウレアーゼ ピロリ菌が生む酵素で粘膜障害を起こします
ウレアーゼと胃酸の方程式